放送法改正で「事実」の認定?2007年02月21日 09:38

 2月21日の新聞によると、総務省がテレビの報道番組で事実を曲げた番組を流した場合には、「再発防止計画の提出」を求めることを可能にする改正を準備しているという。今までは任意だったものを強制にするのがポイントのようだ。強制の場合には処罰も可能になるから、重大な変更ということになるだろう。

 「関西テレビの「発掘!あるある大事典2」の番組ねつ造問題を受けて、総務省が検討している放送法改正案の概要が20日、明らかになった。「報道は事実をまげないですること」に違反した放送局に、総務相が再発防止計画の提出を求める規定を新設することが柱になる。計画提出を求める場合には、総務相が電波監理審議会に諮問する手続きを設けて恣意(しい)的な行政処分に歯止めをかける方向だ。だが、総務相が「事実」かどうかを基に放送内容に踏み込んで行政処分する規定を新設することは、憲法が保障する表現の自由に抵触する恐れもあり、論議を呼びそうだ。

 総務省が検討している放送法改正案では、これまで行政指導で任意で求めてきた不祥事の事実関係調査や、再発防止策について提出を強制するものとなる。対象は「事実でないことを事実であるかのように放送し、国民の生活や権利に悪影響を及ぼすおそれがある」場合に限定することで、ねつ造の再発を防ぐ考えだ。

 放送局が法令に反した場合、総務省はこれまで「警告」などの行政指導をしてきた。電波法に基づいて、一定期間の電波停止や放送免許を取り消す厳しい行政処分を行うことも可能だが、放送局の経営に影響が大きいことなどを理由に前例がない。このため、菅義偉総務相は、中間的な行政処分を導入する必要性を強調していた。【小島昇、臺宏士】(読売新聞2007.2.21)」

 現在の日本は少なくともメディアに関する限り、かなりの程度国家統制が進み、ある面ファシズム化が進行していると考えざるをえない。もちろん、インターネットなどの自由なメディアも機能しているから、「ある程度」であるが、それに対しても権力の統制が進行している側面を否定できない。
 またメディアの方も結局それに追随している。従軍慰安婦の放送に関するNHKの対応は、権力の介入というよりも、それを先取りした追随という感がある。記者クラブが一向に改善されない、ましてや廃止されないという点をみても、メディア側の問題は無視できない。
 しかし、だから権力がメディアの内容チェックをしてよいということにはならない。上記の読売の記事はその後、権力による統制という危惧があるということを指摘しているが、当然のことだろう。

 「あるある大事典」の事実を曲げた事例は問題だろう。しかし、あれは権力が検討した結果、間違いが訂正されたわけではない。メディアの間のチェック機能が働いたこと、視聴者自身がおかしいという気分を抱き、注視していたことが、事実を曲げたことを発覚させた原動力である。今回は権力の方がこれに追随して悪のりしている。メディアの相互チェックも働かず、国民も気づかないのに権力側がチェックして国民に嘘を暴いたのならば、今回のような改正もそれなりに理由があるかも知れない。しかし、ある面健全なチェック機能が働いたのに、このような改正を提案するということは、言論の自律的なチェック機能を抑圧しようとしているのかとすら思われてくる。

 今回の関西テレビや番組を制作した企業は、メディアや国民のチェック機能によって大きな批判を受け、そして、大きな代償を払ったわけである。更に権力が何をする余地があるというのか。

 更にもうひとつ踏み込む必要がある。
 人間誰しも間違える。今回のような意図的な捏造は厳しく社会によって批判されるべきだが、間違えてしまうことに対しては、寛容であってもよい。もともと、メディアの流す情報は間違いがあるかも知れないという意識を常にもっていた方がいいのである。それにもともと何が正しいのか、などということはそんなち簡単に決められることではない。
 むしろ、メディアを誰かが常にチェックしていて、「正しい内容」がそこにある、間違いは訂正される、などという意識が支配的になることの方がよほど困ったことではないだろうか。

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